「もしも一年後、この世にいないとしたら。」を読んだので紹介しつつ自分語り

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前の記事にも書きましたが、起業して12年経って初心を大事にしようと思い、いろいろ考える中で気になる本をKindle Unlimitedで見つけて読んでみたので紹介します。

国立がん研究センター中央病院で精神腫瘍科長を務めていた医師、清水研さんの著作です。がん患者の精神的なケアを行う業務で、日常的に患者の死と向き合う中で得られた知見を、時には患者の言葉を借り、時には自らの言葉で語っています。

この記事では、本の中で特に重要だと思った点について、コーチングを行う者としてサポートする側の視点を軸として、かつ患者側としても感じたことを述べます。

レジリエンスのために必要なのは何か?

がん患者の方たちは余命宣告や治療中に身体に起こる変化によって、絶望や怒り、諦めなどの感情が起こり、人それぞれの悩みが生まれます。そんな悩みを抱えた人に対して、どのように関われば良いか気づいたことを著者はこう述べています。

 以前の私は、「医師なのだから、自分がその人の苦しみを取り除かなければならない」と思い込んでおり、それがうまくいかずに悩んでいました。
当時の私は、役にも立たないアドバイスをたくさんしようとし、ご本人があまり望んでもいない場合でも精神の薬を処方しようとするなど、余計なおせっかいばかりしていました。
しかしある時、そのやり方は役に立たないどころか、むしろ害になってしまうことすらあるということに気づきました。
自分が臨床経験を積み重ねる中で、人は悩みと向き合う力(レジリエンス)を持っていることを実感したからです。私ができることはその力を育むことであり、そのためには話をじっくり聴いて、その人の悩みをきちんと理解する作業を積み重ねることが最も大切だということを実感しました。

レジリエンスとは元々科学の用語で可塑性(元に戻ろうとする性質)のことですが、私も経験上同じことを実感しています。

コーチングを進めて話を聴いていくと、どんな悩みを抱えたクライントの方でも、少しづつですが自分と向き合う準備が整ってきます。さらに補足すると、自分と向き合うためには、本人が話したいことを何でも話せる安全安心な場を作り、やりたいことをやれるように対話を重ねてサポートすることが重要です。

また、アドバイスは相手との関係性とタイミングの両方が揃った場合に初めて効果を発揮するものなので、安易にしないほうが良い場合がほとんどです。アドバイスしたくなったら、提案として行い、相手に選択と決定を委ねると良いでしょう。

2つの課題と乗り越えた先に起こる変化

がん患者の方には、心理的な観点から下の2つの課題があると述べています。

  1. 「健康で平和な毎日が失われた」という喪失と向き合う
  2. 「様変わりした現実をどう過ごしたら、そこに意味を見出せるのか」を考える

また、この2つの課題を乗り越えた先に下の5つの変化が起こるそうです。

  1. 人生に対する感謝
  2. 新たな視点(可能性)
  3. 他者との関係の変化
  4. 人間としての強さ
  5. 精神性的変容

実は、ひとりの患者としてつい最近同じような体験をしました。今年2月から喉の違和感を覚えて、新型コロナウイルスの感染を疑いつつも1ヶ月経っても症状が収まりませんでした。(=新型コロナではない)

4月に耳鼻科に行き、内視鏡検査の結果、腫瘍の可能性がゼロではないとのことで最悪の可能性を考え、ネットでがんについて調べて覚悟を決めました。

その後、紹介状を頂いて大学病院で診て頂いた際、特に問題ないとのことでした。考えられる要因として、ストレスと逆流性食道炎があると言われ、本来は精密検査をするが、ちょうど新型コロナの感染者がピーク時で状況が状況なので来ないほうが良いとのことで、耳鼻科に差し戻しになりました。覚悟を決めたは良いものの、白か黒か確定していないモヤモヤでかなりのストレスでした。

この中で、最悪声帯ごと切除だったらコーチングができなくなり、ブロガーに転身するとか、医療費を稼ぐ必要があるからもっと頑張らないといけないとか、いろいろ考えました。

振り返ると、奇しくも2つの課題を同時進行でこなすような形になっていました。

5月下旬に違和感が全然なくならないことから不安がマックスになり、耳鼻科に行って、やっと紹介状を書いて頂き、6月初旬に大学病院に行きました。下旬になってようやくCT検査を受けることができ、結果は喉については問題なしでした。

喉に問題ないことがわかったとき、状況は異なりますが、すべての人に対する感謝の気持ちで溢れました。

コロナウイルスの対策を全国民が行い、感染者が減った結果、CT検査を受けることができました。医療に従事している方はもちろん、自粛や対策に協力しているすべての人にありがとうと伝えたい思いで一杯になったのです。

また、もっと多くの人の役に立ちたいと強く思いました。一度捨てた命を拾ったような感覚になり、できることをもっとやっていきたいという思いが強くなりました。結果として大事でなかったこともあり、1~5のすべての変化が起こるわけではありませんが、多少の変容はありました。

このように、困難な状況に陥ると目の前に大きな山が現れるような感覚がありますが、山を乗り越えて眺めてみると、新たな自分に気づくこともあります。

「must」と「want」

これはコーチングを行っていて常々感じることですが、人生の軸をmustで考えている人が相当いて、中にはmustとwantの違いに気づいていない人もいます。

人生には本来、「やらなけらばいけないこと」はひとつもありません。もちろん私もですが、いつの間にかやらなければと自分で思い込んでいて、やらなくて良いことをmustにしてしまいがちです。

私は文章を書くことが好きだったんですが、ここ数年ブログを書くことが苦行になっていて、10年以上「コーチングのプロだから、役に立つ情報を伝えなければならない」という思いに駆られていました。ただ最近、何も書けなくなる方が深刻であること、もっと自分を出して書いて良さそうなことに気づいて、オタク成分多めで好きに書く方向にシフトし始めています。

著者も長い間、「医者としてきちんとしていなければならない」というmustに縛られていたことに気づき、少しづつ手放していったそうです。

wantを見つけるヒントとしては、小さいときに夢中になっていたことや、人生で一番楽しかったときに何をしていたか、などを思い出すと良いでしょう。

1日1日を大切にする

がん患者の方は「いつ死ぬかわからない」という思いで日々過ごしていますが、本当は我々もいつ病気になるか、事故にあって怪我をするかというリスクを抱えていることに変わりはありません。

著者は、医療の発達によって死に対するリスクは格段に減っている一方で「死を遠ざけてないものにするのは良くない」として警告を発していますが、私も同意見です。死だけではなく、危険なものや性に関することなど臭いものに蓋をする状況は、現代の日本社会における大きな病巣だと考えますが、長くなるので別の機会にします。

前項のmustとwantについてとも関連しますが、重要なのは「じゃあいつやるの?」ということです。いつ死ぬかわからないのであれば、今すぐやるのがベスト、ということは明確ですが、明日も明後日も当たり前に来ると思っていると、つい先延ばしにしがちです。

私はクライアントの方に「じゃあいつやりますか?」とカジュアルに聴くので、イヤというほど身に沁みてわかっているつもりですが、そう簡単にはいかず、ついダラダラして大きなブーメランが胸に刺さっていることを反省したいと思います。

まとめ

ちょうどタイミングよく患者の立場になったので、患者と支援者の双方の立場で読むことになりましが、思いがけずコーチングのプロとして、ひとりの人間としてどうありたいかを再認識するきっかけになりました。

生きるか死ぬかの困難に直面して悩んでいる方はもちろん、コーチングやカウンセリングを行う方や、当事者のご家族ご友人など、支援する側の人にもオススメします。

本書はKindle Unlimitedで無料で読むことができます。(2020年7月現在)

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株式会社自由の森

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